信孝の声が闇夜にこだまする。
「おのれ光秀ッ、父上に謀叛しようとは何事じゃ!!
 貴様ッ、朝倉家如きの三流浪人が誰のおかげで一国一城の主にまで
 なれたと思うておる!その御恩を仇で返そうとは武門にあるまじき振る舞い、
 断じて許せん!」
「ええぃ、黙れ、黙れぃ!」
光秀は完全に混乱していた。その時、なんと新たな軍勢が到着した。
 そして光秀はすべてを悟ったのである。
到着したのは信長の嫡男(ちゃくなん)である織田左中将信忠の軍勢であった。
 何故、明覚寺に泊まっているはずの信忠、大坂にいるはずの信孝、恒興そして長秀らが
 ここにいて自軍を包囲しているのか・・・。
考えてみればなんのことはない。光秀は嵌(は)められたのである。
 光秀の謀叛の計画を知った光秀の娘で細川忠興に嫁いでいる「お玉」が信長に密告し、
 今回の計画がなったのである。それを知らない光秀はまんまと引っかかってこの
 謀叛を起こしたのである。つまり、信長と信忠が上洛(京に上ること)したこと、
 信孝らが大坂に向かったこと、光秀に出陣令がが下ったことこのすべてが
 仕組まれた罠だったのである。
 「フッ」
 信長は勝ち誇った笑(え)みをみせていた・・・。

しかしこの時、信長にもう一つ大きな危機が迫っている事に
信長はもちろんこの場にいる誰もがまだ知らなかった。
そしてそれは後に光秀の大きな味方となるのである・・。

第3章 更なる事実
第4章 血戦舞