第4章 血戦舞

「おのれっ、謀りおったな・・・」
明智勢は完全に浮き足立った。罠というのはかかったと気付いたときには
 もう手遅れなのである。その上目の前には昨日までの主君、                               もはや神に近い存在の信長がいる。これなら浮き足立つのも無理はない。                     「退けぃ、退くのじゃ!」                                                      今叫んだのは光秀の甥で二番隊長の明智秀満である。                                   秀満隊及びその旗下にある隊がなんとか撤退しようとした。                                しかし、それが惨劇の幕開けとなった。                                            攻め寄せる織田軍の兵と逃げようとする明智軍の兵が双方入り混じっての                      深夜の白兵戦が開始された。                                                 「一人も生かして帰すな!この場で討ち取れぇ!                                       敵将の首討ち取りし者には恩賞は思いのままぞ!」                                    「一点に攻撃を集中せよ。さすれば道は開かれん!                                    敵を恐れるな、ここで臆せば末代までの恥と思え!」                                  両軍の鼓舞する声や鉄砲の音、矢が空をきり刀が打ち合う音、                              お互いに名乗りあう声、斬りつけられ絶叫する声、敵を討ち取り                             手柄を叫ぶ声そのすべてが混ざり血しぶきがあがりまさしく“戦乱”と                          呼ぶにふさわしいものとなっていった・・・。                                         戦乱は織田方が圧倒的に優勢なまま半刻(1時間)がすぎようとしていた。                        そのころには当初1万5千いた明智勢が3千まで減り、                                  疲労により士気も著しく低下していた。もはや明智軍の壊滅は目前と思われた。
光秀は神に祈った。
「天よ!義を立て、悪を討たんとするのならばどうかこの光秀に力を!!」
光秀の願を天はどう受け取ったのか明智軍に追い討ちをかけるかの如く堺にて
遊覧中であるはずの信長の唯一無二の盟友、徳川三河守家康が精鋭三河武士2万を率い現れた。         

第5章 家康謀叛