「織田信長に物申す!」
光秀が叫んだ。
「貴様は古来より伝わりし伝統を滅ぼし、
帝(天皇)をないがしろにし、
さらにもまして将軍を追放し、
寺を焼き払い罪無き人々を撫で斬りにした。
帝に代わり、この光秀が成敗してくれる!
貴様の天下布武もここまでぞッ!」
「フンッ」
光秀の熱弁を軽く聞き流したかの如く信長は鼻でせせら笑った。
「何がおかしい、気でもふれたか?」光秀は信長の笑いの意味がわからない。
「フハハハ。見てみよお蘭、儂が申した通りであろう?」
「はい、さすが上様にござりますな。」
さすがの光秀も困惑していた。信長のこの言葉を聞くまでは・・・。
「光秀よ、何故この儂が小勢でこのような小さな寺に泊まったか、
わからんではなかろう?」
その時光秀は我が目を疑う光景を目にした。
本能寺を包囲している自軍がなんと他の軍勢に包囲されていたのである。
その旗指物はなんと長宗我部の討伐及び、四国平定に向かうため、
大坂表にいるはずの信長の次男、三七郎信孝隊と
織田家宿老、丹羽五郎左衛門長秀と池田勝入斎恒興の陣営だったのである。
「ッ・・・。」
光秀は絶句したまま脳裏が凍り付くのを感じていた。