三章 報告
前日、総攻めを宣言した勝家だったが、日が高く昇ってもそれは行われなかった。
攻撃開始の直前、魚津城より降伏の申入れがあったのである。
それにより早速に軍議が召集されたが、結論はなかなか出なかった。
申し出を受け入れるか否か、意見が真っ二つに分かれて対立したのだ。
受け入れることを是としたのが前田又左衛門利家で、
非としたのが、佐々内蔵介成政と佐久間玄蕃允盛政だった。
「敵が我らに降ると申しておるのだから受ければ良いではないか、
何故拒絶する道理があろうか!!無駄な血は流さぬに越したことはない」
「甘いぞ又左、奴らは我らに最後まで抗い、落城の寸前になって降伏を
 申し出るなど武士の風上にも置けぬ行いよ」
「そうで御座います、それにここで奴らを許してしまっては、
 我らに抗おうとも最後に降伏すれば済むと思う輩が現れ、
 今後の上杉攻略に支障が出んとも限りませぬ。
 見せしめの意味も込めて、ここは敢えて受けず、撫で斬りにすべきかと」
どちらの意見も採るべき点があり、勝家は決断を下しかねていた。
その後も論議は続き、勝家はさんざん考えた結果、申し出を受けることにした。
柴田軍の知らせを受けた魚津城は、即座に開城され、織田軍が入った。
残っていた城兵は、故郷に落ちていく者や主君に従う者、そのまま織田軍に従う者などに分かれた。

その晩、利家のもとに昨日派遣したばかりの奥村助右衛門永福が戻った。
あまりに早い帰還に驚いた利家だったが、永富が伴ってきた武井夕庵の報せには更に驚愕した。
「ま、真か!?えぇい、よいわ、永富、夕庵殿、親父殿のもとへ報告へ参ろうぞ」
利家は取り乱しながらも、勝家のもとへと急いだ。